再婚花嫁は、ティアラを着ける? それとも着けない?
家族や親しい人たちを招いての小さな結婚式であっても、それが伝統と格式が残る英国王室の花嫁であった場合、さらに複雑になる。
2026年6月6日、ピーター・フィリップスとハリエット・スパーリングの結婚式が行われた。双方再婚である2人のウェディングは、家族を中心とするプライベートな祝福の場となった。その小さな結婚式では、主役の花嫁の頭上にティアラが輝いていたことが話題となる。再婚なのにティアラ——。
再婚が(ある文化や宗教観では)当たり前になった現代において、私たちは再婚をどこまで意識してウェディングを迎えたら良いのだろうか。
英国王室とティアラ——王室にとってティアラはただの髪飾りではない

日本の花嫁が身につけるティアラは、花嫁小物としてプリンセス感や可愛らしさ、上品さなどを表すアクセサリーとしての位置づけである。ゆえに、デザインやティアラをつける際のヘアスタイル、つける位置などが吟味され、ブライダルファッションの一部となっている。
しかし、王室や皇室ではその意味合いが異なる。
英国王室においてティアラは、花嫁を美しく飾るだけのものではない。それは、家族の歴史、王室の格式を身につける装身具であり、花嫁がどの文脈で迎え入れられるのかを静かに示すものでもある。いわば、ティアラによってその人の立ち位置が垣間見える。
キャサリン妃が身に付けたCartier Halo Tiaraは、ジョージ6世が妻エリザベスのために購入し、王室本流に受け継がれてきたティアラであり、メーガン妃のQueen Mary’s Diamond Bandeau Tiaraはエリザベス2世から貸与されたものである。その中央のブローチはメアリー王妃の結婚贈答に由来している。
英国王室の花嫁がつけるティアラは、単にデザインの美しさのみで語られるものではないのだ。どのティアラを、誰から借り、どの来歴を身につけるのか。そこに、英国王室のウェディングにおける装身具の重みが感じられる。
再婚の花嫁とティアラ——かつて装いにあった抑制

ピーター・フィリップスの母であるアン王女が1992年、ティモシー・ローレンスと再婚した際は、ロイヤルウェディングでありながら、30人ほどのゲストと過ごす小さな結婚式だった。初婚の伝統的なロイヤルウェディングと異なり、スコットランド*にて結婚式を挙げたアン王女は、髪に花を飾り、オフホワイトのジャケットとスカート、黒いパンプスを合わせている。そこにはティアラも、ベールもなかった。その装いには、再婚を王室の儀礼としてみせるより、家族と共に祝福する「私的な結婚」という意識が読める。
同じく、カミラ王妃も2005年の結婚式でティアラを着用していない。民事婚ではPhilip Treacyのヘッドピースを、その後の祝福式では淡いブルーのシフォンガウンに、同じくPhilip Treacyによるゴールドの羽根のヘッドピースを合わせている。ここにも、アン王女の再婚式以上に強い配慮が感じられる。
それは再婚、ということだけではなかったかもしれない。チャールズ皇太子との長い不倫関係、ダイアナ妃の記憶、そして王位継承者の結婚であったこと。複雑な背景の中で、ロイヤルブランドとして、華やかに全面に出るのではなく、格式を保ちながらも控えめな装いを選択したようにみえる。当時の世論や制度、王室の立場を考えると、ティアラではなくヘッドピースを選んだことは、祝福と慎みのバランスをとる装いだったのだろう。
*当時、イギリス国教会は再婚を認めていなかったためスコットランドでの挙式となった
メーガン妃が可視化した、新しいロイヤルブランド像

メーガン妃のティアラは、離婚歴のある女性が英国王室の花嫁として祝福される姿を、世界中に可視化したといえる。
ロイヤル・コレクションの中から選ばれたBandeau Tiaraは、クレア・ワイト・ケラーのシンプルでモダンなウェディングドレスに、華やかさと揺るぎないロイヤルブランドを添えた。純白のドレス、長いベール、そしてセントジョージ礼拝堂で行われた豪華な挙式は、「再婚だから控えめに」という考え方は感じられない。再婚だけでなく、アフリカをルーツに持つ米国人の女優、というメーガン妃を迎えることで、「多様性を受け入れる」「開かれた英国王室」のイメージを、ロイヤルウェディングを通じて、発信したとも読み取れる。ティアラやドレスは、視覚を通じて瞬時に世界中へ広がるメディアでもある。だから、再婚であってもロイヤル・コレクションからティアラが選ばれる必要があったのではないだろうか。そこには、再婚であることを理由に花嫁の装いを枠付けない、新しいロイヤルブランド像を構築しようとする様子が伺える。
ハリエット・スパーリングのティアラが語る、大人の祝福
2026年6月に行われた、ピーター・フィリップスとハリエット・スパーリングの結婚式では、王室と家族、双方からの影響がその細部に感じられた。共に娘がいる、大人の再婚式である2人は、ケンブルのオール・セインツ教会にて行われた。式にはチャールズ国王やカミラ王妃、ウィリアム皇太子夫妻をはじめロイヤルファミリーが列席し、ウェディングレセプションは、アン王女の邸宅であるガットコム・パークで開かれたと複数メディアが報じている。初婚はウィンザー城の礼拝堂で行われた事に対し、今回のウェディングは「地域の教会」と「母の邸宅」という小さな規模であった。
ドレスはキャサリン妃の御用達ブランドとしても知られるEmilia Wickstead(エミリア・ウィックステッド)がデザイン。ゴージャスすぎず、成熟した花嫁の静かな品格を感じさせるデザインは、王室らしいクラッシクさを保ちながらも、モダンで快活な印象さえ与えた。
ヘッドドレスには、Pragnellのダイアモンドとパールを用いたティアラを合わせた。英国王室の再婚花嫁がティアラを避けることが多かった近年の慣例からの変化として、多くのメディアに注目された。エドワーディアン様式とアールデコの要素を併せ持つデザインのティアラは、ウェディングドレスのモダンなエレガンスに溶け込み、「再婚の花嫁はティアラを控えるべき」という沈黙の規範から、もう一度祝福をまとう花嫁へと昇華させたように見える。ピーター・フィリップスの立場もあるが、ロイヤルウェディングへの接続というより、家族的で私的な祝福の装いとして読める。
これはメーガン妃のティアラとは違う。メーガン妃のティアラは、「王室に迎えられる花嫁」を象徴していた。だからロイヤル・コレクションからティアラが選ばれているのだろう。しかし、ハリエット・スパーリングのティアラは、もう少しプライベートな、家族的な祝福に近いものとしてみえてこないだろうか。
2008年のオータム・ケリー——もうひとつのティアラとの比較

ピーター・フィリップスの最初の結婚式では、花嫁オータム・ケリーがアン王女から貸与されたティアラを着用している。エリザベス女王の孫として初めてのロイヤルウェディングであり、まさに「王室に迎え入れられる」花嫁としての装いが必要だったとも考えられる。
2008年、ウィンザー城のセント・ジョージ礼拝堂にて行われた結婚式でオータムは、サッシ・ホルフォードのウェディングドレスに、アン王女のコレクションから貸し出されたFestoon Tiaraを着用している。一方、ハリエット・スパーリングは、ブランド選びなどは王室を意識しつつも、大人の花嫁が今の自分として祝福をまとう装いだったのかもしれない。
再婚ウェディングは、祝福を控えめにする理由ではない

再婚だから控えめに、という考え方は文化や時代によって変化する。もちろん、小さな結婚式を選ぶことも素敵だ。しかし、「再婚だから控えめな結婚式」にする必要はない。ハリエットの装いが印象的だったのは、白いドレス、長いトレーン、それに子どもたちがブライズメイドとして参加し、支える様子から感じられるから。そこには、再婚であることや母であることを隠すのではなく、そのまま祝福の場に含み込むような美しさがあったからだ。つまり、ティアラを着ける? 着けない? これが本質ではない。再婚だから、大人だから、子どもがいるからといって、祝福そのものを小さくしなくてもよいということだ。ハリエットの装いは、そんな現代のウェディングの変化を、静かに映していたように感じられる。
まとめ:ティアラが映した、ロイヤルブランド像の変化
特に王室においてのティアラは、格式やファミリーヒストリーをまとう装身具である。アン王女やカミラ王妃の再婚時には、時代や立場ゆえの抑制も感じられたが、その後、再婚であるメーガン妃がティアラを着けることで、王室に迎え入れられている姿を可視化した。
ハリエットはより家庭的で、大人の再婚のウェディングとしてティアラを着用したようにもみえる。ある報道によると、ハリエットはあえてアン王女のティアラを借りず、Pragnellのティアラを着けることで、自身の現代的なウェディングスタイルへのオーナーシップを保つ選択だったとも報じられている。つまり、アン王女ゆかりの由緒あるティアラを結婚式でまとったアン王女の娘ザラ・ティンダルやオータム・ケリーとの比較を、意図的に避けるためだったとも言われている。王室のティアラを借りないという選択そのものが、ハリエットの成熟した大人の意志であり、その選択を王室が受け入れていること——それこそが、新たなロイヤルブランド像なのかもしれない。
ハリエットのティアラは、王室の権威を誇示するためのものというより、人生を重ねた花嫁が、現在の自分が祝福の中心に立つことを静かに示しているように感じる。ティアラを着用するかどうか、ではなく、祝福を小さくしすぎないこと。そこに、現代のロイヤルウェディングから私たちが受け取れる、静かな変化があるのかもしれない。
【出典URL】
- https://www.thecourtjeweller.com/2022/04/the-queens-cartier-halo-tiara.html
- https://www.vogue.com/article/the-history-of-meghan-markle-wedding-tiara
- https://www.tatler.com/article/princess-anne-wedding-outfit-humanitarian-reception
- https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/prince-harry-details-meghan-markles-wedding-tiara-drama-in-spare
- https://www.harpersbazaar.com/jp/celebrity/celebrity-buzz/a69491330/queencamilla-13milliondollar-tiara-251120-hns/






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